インタビュー 最終更新日:2021年8月10日

『ビタミンAはどんな効果を肌にもたらす? ――種類やデメリット、使用上の注意点』

レチノールやトレチノインという成分を耳にしたことがある方は多いと思います。これらはビタミンAの一種で、しわやしみの改善効果があると何となく知ってはいるものの、具体的な効果や成分の違いについて知っている方は少ないのではないでしょうか。本記事では、ビタミンAの種類や効果を中心にデメリットや使用上の注意点について、野本真由美スキンケアクリニック総院長の野本 真由美(のもと まゆみ)先生に伺いました。

ビタミンAの大きな特徴

真皮の細胞までアプローチできる

ビタミンAには皮膚のターンオーバーを促進させたり、コラーゲンやヒアルロン酸の産生を促したりする効果があります。いくつかの種類があり、レチノールやトレチノインなどが美容医療でよく使われます(詳しい効果や種類については後述します)。
ビタミンAがほかの成分と一線を画す点は、細胞の核内にあるDNAに直接アプローチして効果を発揮するという点です。細胞内にはビタミンAに特異的なレセプター(受容体)があり、ビタミンAを服用したり塗布したりすると細胞がすかさずビタミンAをキャッチして、核内にその情報を伝達します。DNAに直接はたらきかけることで、根本的に皮膚の状態を変えることができるのです。

また、日常的に手に取れる市販の化粧品に入っている成分は通常皮膚のもっとも浅い(表面に近い)角質層にしか届きませんが、ビタミンAは表皮の奥にある真皮にまでアプローチすることができます。

ビタミンAの効果・効能

ビタミンAには大きく3つの特徴的な効果があります。

(1)表皮のターンオーバーを促進

皮膚は、古くなったものを捨て、生まれ変わることで綺麗になっていく臓器です。
これをターンオーバーといい、ビタミンAにはターンオーバーのスピードを非常に早くする効果があります。ターンオーバーが促進されることで、日焼けでメラニンができても、それがしみとなって現れる前に早めに排出することができます。また、若くて新しい細胞をどんどん表皮に出すことができるため、肌を若々しく保つ効果も期待できます。

(2)真皮にコラーゲンやヒアルロン酸を増やし、肌をふっくらさせる

2つ目の効果は、真皮に直接アプローチして、コラーゲンやヒアルロン酸を増やすことができる点です。
真皮には肌のハリや弾力を維持するのに重要なタンパク質であるコラーゲンやエラスチン、水分を維持するヒアルロン酸などのムチン類が存在しています。通常の化粧品に入っているような成分は真皮まで到達することは困難ですが、ビタミンAは真皮までアプローチして、線維芽細胞がコラーゲンやヒアルロン酸を産生する力を促進してくれます。タンパク質や水分が豊富になるため、真皮にボリュームが出て肌をふっくらとさせることができます。肌の奥深くから保湿することができるため、クリームなどで保湿する必要がなくなる方もいます。
また、真皮には表皮に向かって栄養を渡す役割もあるため、真皮の状態を改善することは、表皮の改善にもつながります。

(3)血管を増やしてくすみを改善させる

3つ目の効果は真皮の血管を増やすことです。
年齢を重ねると、真皮のもっとも浅い部分にある乳頭層の血管が減少します。すると、表皮に栄養を届けにくくなり、肌の乾燥やくすみを感じるようになります。このようなとき、ビタミンAを肌に塗ると、乳頭層の毛細血管が増えて栄養を運びやすくなり、健康的なピンク色の肌にすることができます。ただし、人によってはかえって赤みが強くなりすぎることがあるため注意が必要です。

ビタミンAの種類による効果の違いや選択方法は?

ビタミンAには、生理活性*が弱い順番に、パルミチン酸レチノール、プロピオン酸レチノール、酢酸レチノール、レチノール、レチナール、トレチノイン(レチノイン酸)に大別されます。また、ビタミンAは相互変換できる物質であり、以下の図の矢印が示すように変化します(ただし、トレチノインだけは不可逆性であるため、ほかの物質に変化することはありません)。
相互変換は、酵素**のはたらきによって行われています。そのため、栄養状態が十分でなく酵素が作れない状態にある場合は、たとえばパルミチン酸レチノールから、より効果の高いレチノールに変換されにくくなることが予想されます。

*生理活性:体内における物質の効果
**酵素:体の中で起こる化学反応を引き起こすために必要なタンパク質

生理活性が強いほどビタミンAとしての効果は得られますが、生理活性が強ければ強いほど肌によいのかというと、必ずしもそうではありません。各成分にメリットやデメリットがあり、美容皮膚科では患者さんの求める効果や悩み、肌の状態などを医師が総合的に判断して一人ひとりに適した処方を行います。ここからは、各成分が持つ作用について解説します。

パルミチン酸レチノールは光老化から肌を守る

ビタミンAのうち、パルミチン酸レチノールやプロピオン酸レチノール、酢酸レチノールはエステル型と呼ばれ安定性が高い成分です。そのため、化粧品にも配合されていますし、私たちの皮膚にも備蓄されています。生理活性が弱いため先述したビタミンAとしての大きな効果は期待できませんが、紫外線のダメージから肌を守ってくれるというメリットがあります。
ビタミンAは光や熱などに非常に弱いため、皮膚に備蓄されているパルミチン酸レチノールは紫外線の照射によって減少してしまいます。しかし裏を返すと、パルミチン酸レチノールがクッションになることで、紫外線による肌の老化(光老化)を防いでくれていると考えることができます。日頃から紫外線をよく浴びる習慣のある方には適した成分です。
なお、紫外線でエステル型レチノールは枯渇するため、皮膚に直接塗ったり、食事やサプリメントから摂取したりして補うことが大切です。

トレチノインは皮膚の病気や抗老化治療に使われる

生理活性が極めて高いトレチノインは、ビタミンAが持つ効果を最大限に発揮することができる成分です。そのため、にきび(尋常性ざ瘡)やしみなど、皮膚の病気の治療薬として使われます。また、深いしわやたるみなど、抗老化治療にも使用されます。ただし、効果が強い分、皮膚への刺激が非常に強く、治療初期に赤みや皮向けなどの副反応が起こります。紫外線の影響も受けやすいので夜の使用が推奨されます。

部分的に肌を改善したいときにはレチノールを

ビタミンAのうち中間にあるレチノールは、相互変換によってトレチノインにもエステル型レチノールにも変わることができるため汎用性が高く、美容皮膚科ではよく使われる成分です。トレチノインが皮膚を総合的に入れ替える(ジェネラルリペア)のに対し、レチノールは部分的に皮膚を改善したい(スペシフィックリペア)ときに使用します。皮膚への刺激はなるべく抑えながら、小じわの改善や肌にツヤが欲しいなどといった方に適した成分です。

ビタミンAのデメリット

ビタミンAの代表的な副反応に、赤みや皮剥け、乾燥、かゆみなどのA反応というものがあります。トレチノインのように生理活性が強くなるほど、A反応が強く現れます。
また、ビタミンAには皮膚のターンオーバーを促進させて表皮の角質層を密閉させることで肌にツヤを出す効果がありますが、人によってはツヤではなくテカリと感じて好まない場合もあります。
そのほか、ビタミンAにはメラニンを排出させる効果はあるものの、メラニンの発生を抑制させる効果はないこともデメリットとして挙げられます。しみの状態によっては、ビタミンCやハイドロキノンといった美白成分を併用する必要があります。

ビタミンA使用上の注意点

ビタミンA使用中は皮膚が過敏な状態になっているため、刺激を与えると炎症や酸化、色素沈着が起こることがあります。そのため、肌を強く擦ったり、紫外線をたくさん浴びたりしないように気をつけましょう。
また、ビタミンAを必要以上に使いすぎると、肌は刺激に弱くなっていきます。そのため、マスクで擦れたり、少し紫外線にあたったりするだけでしみが生じてしまう方もいます。なかには、刺激に過敏になっていることに気づかずに使用を続けている方もいらっしゃいます。もし、いつも使っている化粧水がしみるなど、刺激を感じるようになったときには医師に相談するようにしてください。そのうえで、使用中のビタミンAを一度中止したり、ご自身の肌に合った成分に変えたりする必要があるでしょう。

ビタミンAと併用するとよい成分

ビタミンAの吸収を促進させるグリコール酸、炎症や酸化を抑えるビタミンC

ビタミンAと一緒に使用するとよい成分の1つがグリコール酸です。グリコール酸はケミカルピーリングに使われる成分で、肌のpHを下げてビタミンAの吸収を促進してくれる効果があります。
また、ビタミンAを使用すると角質に刺激が生じて活性酸素が発生するため、ビタミンCなどの抗炎症・抗酸化作用を持つ成分との併用も推奨されます。
ビタミンAとの併用を避けなければならない成分は特にありませんが、妊娠中には使えないビタミンAがあるので注意が必要です。

“効果が強いほど綺麗になる”は間違い――自分の肌に合わせた適正使用を

美容に取り組む際には、“大は小を兼ねない”ということをきちんと知っていただきたいと思います。皮膚はとても賢い免疫臓器です。そのため、効果の強い成分でも必要以上に使い続けると耐性ができてしまい、治療をしても効果が出ない肌になることがあります。また肌に大きな刺激を与えるトレチノインは、使用方法を誤るとかえって色素沈着が生じる可能性もあります。
美容医療を行う際には、その方にとってどうすることが肌を健康に美しい状態にできるかを考えることが重要です。そのため、トレチノインの強い効果を求めている方でも実際に診察してほかの成分だけで十分に肌を綺麗にできると判断すれば、トレチノインは処方しません。反対に、トレチノインで疾患のある皮膚を治療する必要がある場合には、トレチノインの使用をおすすめします。
もし肌に悩みやトラブルを抱えている場合には、日頃行っているスキンケアがご自分の肌の状態やライフスタイルに合っていないのかもしれません。その場合には、一度美容皮膚科に相談してみていただいてもよいと思います。

野本真由美スキンケアクリニック 野本 真由先生

1998年信州大学医学部を卒業後、新潟大学医学部付属病院皮膚科に勤務。2006年に退職後、美容皮膚科を学ぶため渡米し、翌2007年、新潟市に野本真由美スキンケアクリニックを開院。2018年には野本真由美クリニック銀座を開院し、2021年現在、野本真由美スキンケアクリニック総院長、野本真由美クリニック銀座院長を務める。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本抗加齢医学会認定専門医、日本東洋医学会認定漢方専門医、薬学博士。Dr.ゼイン・オバジが日本で認める教育ドクターで、美容漢方の第一人者。

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